牛乳パックを使った制作遊びは、幼児の創造性を引き出し、
試行錯誤しながら完成に向けてがんばる力を育むことができます。
特に、おもちゃ作りは一生懸命に作ったほど、制作後の遊びも活発になり、
自分の作ったおもちゃに対しての愛着芯も芽生えます。
制作して終わるだけでなく、子どもたちがますます意欲的になり
遊びが継続、発展して欲しいと
保育者のみなさんは願っていますよね。
でも、経験が少なくて
どんな制作活動をしたらいいのか悩んでいる保育者のみなさんに
保育者養成校の講師をしている私が、
制作後も作品を使って楽しく遊ぶことができるように
牛乳パックで作るおもちゃのアイデアをご紹介いたします。
牛乳パックは、幼児の制作に最適
子どもたちは目的があれば、意欲的に集中して遊びに取り組みます。
たとえ失敗しても、なんとか工夫して自分が考えたものにしようと頑張ります。
牛乳パックは、そんな子どもの制作遊びに最適な材料だと言えます。
- 身近なところにたくさんあるから、いつでも牛乳パックを調達できる。
- たくさんあるから、制作で失敗しても何度でも挑戦できる。
- 水にも強いから、作ったものは水遊びに使うことができる。
- マジックで絵を描いたり、糊で色紙を貼ったりすることも可能であり、
装飾を楽しむことができる。
つまり、自分がイメージしたものを作ることができる。 - 部分的に硬い部分があるため、制作時に切ったり折ったりすることには
大人の援助を必要とすることもあるが、幼児の力で変形させることが容易い。 - 強度があり、作品は破れにくく、保管していても形が崩れない。
- 廃材利用で、おもちゃ作りとして経済的である。
牛乳パックのおもちゃ作りは意欲的
制作遊びの中でも、制作後にそれを使って遊べるようなおもちゃ作りが、
子どもにとっては一番やる気がは出るようです。
つまり、保育者や友達がすでに作っていて、
それを使って楽しそうに遊んでいる姿を見ているからです。
制作にあたって、目の前に作ろうと思っている作品や
それを使って遊んでいるモデル(保育者・友達)がいるために
自分はどのように作ろうかとイメージしやすいからです。

牛乳パックのコマで遊んでいるA児を見て
Y児「Aちゃん、そのコマどうしたの?
よく回るね~」
A児「ぼく、自分で作ったんだよ」
Y児「いいねぇ、ぼくも作ろう!」
A児は、材料ボックスの中から、
牛乳パック(自分のお気に入りのパッケージのもの)を
持ってきて、コマづくりを始めました。
そしてA児よりも、もっといいコマを作ろうと
張り切っていました。
牛乳パックで作ったおもちゃ
〈絶対に回るコマ〉
牛乳パックの底から1センチの位置まで切り込みを入れます。
コマを回す時の中心の芯が、ペットボトルのキャップ。セロテープで貼り付けるだけでOK。
油性マジックで好きな絵を描きます。
一般のコマよりも大きいため、指先の動きがまだ育っていない子どもでも簡単に回せる。

〈リズミカルなカタカタ〉
これも牛乳パックとペットボトルキャップだけです。
赤ちゃんの目の前で鳴らすと喜びます。
持ち手もパックを使いますが、牛乳パックの角を利用して切る、折り曲げが楽です。
キャップはセロテープでとめますが、両方がピタッとした位置になると
いい音が出ます。
羽根の部分に持つ手を射し込む時の切り込みは、大人の援助が必要かもしれません。

〈突然はねてビックリのパッチン〉
牛乳パックの一面を切り取って、半分に折ります。
小さな切り込みを入れて、輪ゴムを引っ掛けます。
一方に引っ掛けて、もう一方に引っ掛ける時にクロスさせることがポイント。
それを反対側に折り曲げ、机に置くと、急にパチーンとはねて跳びあがります。
それが、いつかいつかな?とワクワクドキドキして見つめている時も
とってもドキドキして楽しいです。

〈ハラハラドキドキ積み上げパックブロック〉
牛乳パックを2・3センチ幅くらいに切ります。
作り方は、とっても簡単。
しかし、まっすぐに切れていないとバランスが崩れるから、
作った以上にハラハラして盛り上がる遊びです。


上から見たら、
きれい!

〈水遊びがとっても楽しみになるおもちゃ〉
4・5歳児でもできますが、ちょっと難しい部分は大人の手助けが必要かもしれません。
1 水車
牛乳パックの角を利用して、水車の羽根を作ります。
水に濡れても接着が外れないように、ホッチキスを利用しています。
羽根がクルクル回るように、ストローの中に竹ひごを通しています。
この段階で、竹ひごだけを持って、羽根に息を吹きかけて回れば成功。
竹ひごの両端を支柱の割り箸(全部割らない)に差し込ませ、安定させます。
羽根は油性マジックで好きな絵を描きます。
クルクル回転に合わせて、少しずつ絵を変えて描くと、パラパラ漫画みたい!

2 舟
牛乳パックを横半分に切ります。
輪ゴムが船が進む動力になります。
輪ゴムを長くつないでいきますが、あまり長くする必要はありません。
櫂も牛乳パック。
舟の横に穴を開け、竹ひごを通して、両側に後から櫂を付けます。
両方の角度が対象になるようにするといいです。
舟は、油性マジックやシールでデザインすると楽しいですね。

櫂を指でクルクル巻いています。
そのまま水に浮かべると、舟は進みます!
時には、後ろに進んで、「あれっ?」
どこがおかしいのかなぁ・・・
試行錯誤で、少しずつグレードアップの舟になりました。

〈パックわんちゃん〉
自分の考えた洋服を着せたり、毛を付けたり
かわいい犬(猫・うさぎなど)を作りました。
足は、洗濯ばさみの使用。安定感あります。
餌入れも、牛乳パックの底の利用です。
友達とごっこ遊びに発展しますね。

一番のおすすめはパック人形で人形劇
子どもたちは人形劇が大好きです。
しかし、子どもたちがリクエストするだけの人形はありません。
そんな時に、手軽に牛乳パックで人形を作ればいいのです。
人形の作り方の基本は、どれも同じです。
あとは、人形の特徴をとらえてデコレーションするだけです。

〈人形の基本〉
1 牛乳パックの角の2箇所(対角)に切り込みを入れます。
底まで全部切ってしまわず、7センチくらい残します。
2 切り込みをした部分を開いて、両サイドに折り返します。
ちょっと硬いけれど・・・ドッコイショ!という気持ちで
大人が一緒に手伝うところかもしれません。
1で7センチくらいと書きましたが、人形の頭部と体になりますから、
作りたい人形によって、サイズを変えるといいです。
3 ひし形の開口部は、人形の口になります。
口を中心に、頭部と体の輪郭を描き、切り取るといいです。
人形に服を着せたり、髪を付けたり。
カエルには、ビョ~ンと伸びる蛇腹折りの舌も工夫されています。
基本の形は同じでも、飾りつけが違っただけで、こんなに人形の雰囲気が変わりますね。

何箇所が力が必要な部分がありますから、そこだけ援助すれば、
子どもたちはイメージを膨らませながら、喜んでいくつでも作りますよ。
大好きな物語に登場する人形いろいろ
〈あかずきんちゃん〉
猟師とその他の人形の大きさが、ずいぶん違うようですが、基本はすべて同じです。

〈3匹のこぶた〉
わらの家、木の家、レンガの家など、背景に必要なものも
牛乳パックでできています。

〈おむすびころりん〉
穴の中には、たくさんのネズミが登場しますが、
子どもたち一人一人が一匹ずつ作れば、
クラスの全員で演じる人形劇になります。

人形で遊ぼう!
それぞれに自分が制作した人形を持って、自由なお話遊びです。
舞台を作ってやれば、本格的な人形劇になりますね。

〈保育者が演じると、一層おもしろい人形劇に〉

人形作りの材料
・人形の体は、牛乳パック1本で一体
・色紙、不織布、布、フェルト、毛糸、モール など
・接着は、糊でもいいのですが、作ったらすぐ遊びたいのが子どもの心境
セロテープや両面テープを使うと制作が楽になります。
・ハサミは、あまりサイズの小さいものは、牛乳パックを切るのには適していません。
ある程度の大きさがあるハサミの方が楽に切ることができます。
人形の装飾に使えるように、日ごろから、材料集めをしておくといいですね。
たくさんの種類の材料があれば、子どもたちはイメージしたものが作りやすくなります。
牛乳パック制作で気を付けること
1 安全面
牛乳パック自体は、それほど尖った部分はないので、触って怪我をすることは少ないでしょう。
しかし、ハサミで制作することには、かなりの配慮が必要です。
牛乳パックの重なった部分は、大人でも切り取ることに力がいるようです。
はさみの取扱いには十分気をつけさせ、硬い部分だけは手伝ってあげた方がいいでしょう。
様々な材料を使って、人形の特色を出すために飾り付けますが
子どもにとって
有害な成分が含まれていないか(ペイント、接着など)
先のとがったものは、どのように気を付けるか(モール、穴を開けるための千枚通しなど)
小さな部品は、飲み込んだりする危険性はないか(ボタン、ピンなど)
いずれも子どもの発達に応じて、安全に対する配慮が必要です。
2 衛生面
牛乳パックは、飲んだ後によく洗って乾かしたものを使いましょう。
乳製品アレルギーの子どもがいるようならば、洗剤を使って洗浄する方が好ましいです。
なお、牛乳バックを制作するまでに保管している場所はきれいでしょうか?
ほこりをかぶっていないか、カビは生えていないか、きちんと確かめてから制作に使いましょう。
3 意欲的な制作遊び
子どものイメージを実現させるためには、
子どもの成長や興味に応じた内容や
材料が準備されるべきです。
ハサミなど使うから、落ち着いて制作できる環境づくり
作ったものを使って、すぐに遊ぶことができる環境づくりなど
作って終わりではなく、
作ったものを使って遊ぶことに期待して
おもちゃ作りの目的をきちんと持たせておくと
より一層意欲的になります。
まとめ
牛乳パックは、子どもの遊びにとって身近な材料です。
廃材利用・・・SDGs・・・子どもの時から意識づけにもなりますね。
牛乳パックは、子どもの年齢、発達の段階に応じて
様々に形を工夫したおもちゃに変えていくことができます。
制作活動では、試行錯誤をしながら工夫したり
自分のイメージを実現していくことにより
創造性・想像性がとっても豊かになります。
大人が作って、子どもと一緒に遊んだり
子どもが作って、友達と一緒に遊んだり
牛乳パックで作ったおもちゃは、人間関係を豊かにしていくことにもなります。
保育者にとっては、遊具を購入するゆとりがない時
自ら作ることで、自分の保育も豊かなものになります。
アイデア豊かに、
身近な牛乳パックを利用して、子どもたちの喜ぶ
おもちゃを作ってみませんか?
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