子どものけんかは、人間関係力が育つ成長のチャンス!親がするべき対応

問題行動

子どもがけんかをしているところを見ると慌てます。
なんとか止めなければと大人は思います。
しかし子どものけんかは成長するために、とっても大切な行動なんです。
もっとも怪我をするようなけんかは止めないといけませんけれど。

なぜ子どものけんかは大切なのか?
どのような対応をしたらいいの?
けんかで育つものは何?
けんかで間違った対応をしてしまった時には、どうするの?

私は38年間幼稚園教諭をしていました。
けんかをしたことで幼稚園に行きたくなくなったり、保護者間のいざこざに発展したりという現場をたくさん見てきています。
その都度、けんかの正しい対応の仕方を考えてきました。
保育者養成短大では、保育者の卵たち(学生)にもけんかの大切さを講義しています。
子どもの人間関係に悩むパパやママに、私のたくさんの経験から「正しいけんか」「親の対応」についてお話したいと思います。

子どものけんかで、大人がする大切なこと

すべてのけんかが、子どもにとっていけないものではないのです。
けんかは、子どもの成長にとって大きなチャンスになることを考えて、サポートしてあげましょう。
感情に振り回わされないで、大人として冷静に捉えてくださいね

親が気を付けること

1 けんかをすぐに止めない!
けんかをすることで成長するものがあるのならば、まずはけんかの成り行きを見守っていきましょう。

2 けんかの内容を、冷静に把握しましょう。
けんかの状況を見たら、つい「やめなさい!」と言って、けんかをおしまいにしたくなりますね。
しかし、その場でけんかは収まったようでも、けんか当人たちの気持ちはおさまってはいません。
なぜ、けんかが起きたのか原因や成り行きを把握して、それでも子ども同士で解決できないようならば大人が間に入ってあげましょう。

3 どちらか一方の見方をしてはいけません。
大人は、プロレスなどのレフリーではないのです。
けんかの解決は子どもたちでしなければならないのです。
大人は、どちらかの見方をしたり責めたりするのではなく、中立な立場を努めてくださいね。

4 安全面に気をつけましょう。
けんかを止めに入るのは、物を持ち出して危険な行為を取り始めた時や暴力を振るい始めた時です。その時だけは、すぐにけんかを止めた方がいいですね。

T保育者
T保育者

〈安全にけんかをさせるために〉
いつ、どこでけんかが起きるか分かりません。
幼児の場合、けんかで怪我をすることはマレなのですが、
(爪で引っ掻くことには、要注意!)
狭い場所でけんかをした時に、まわりにぶつかるものがあると危ないです。

笑い話のようですが、、、
狭い場所でけんかが始まったら、
「ちょっと待って!ここは危ないから、もう少し広い場所でしようよ。」と
場所移動を勧めたら、すんなり子どもたちは従っていました。
もしくは、カーッとなって投げそうな物があれば、慌てて片付けることをして危なくない環境でけんかをさせるように配慮していましたよ。

介入のめやす

・叩く、蹴る、引っ掻くなどの暴力行為が始まり、そのことでどちらかが傷つく恐れがあると判断した時。
・どちらか一方、もしくは両方ともが激しく泣き崩れて、以降の話し合いが不可能になった時。
・長引きすぎて、お互いの感情が高ぶってしまった時。

以上のような事態になってきたならば、けんかに入って仲裁すべきです。

子どものけんかで、大人がしてはいけないこと

× 感情的に、一方的に叱る。
「うるさい!いいかげんにしなさい!」と怒鳴る。
大人が冷静さを欠いたまま叱ると、「親が(先生が)怖いからけんかをやめよう」という気持ちになり、けんかの原因や話し合いで育つものがうやむやになってしまいます。
大人に対しての恐怖心だけが残ってしまいます。

Y保育者
Y保育者

〈「先生が怖い!」と言われた〉
感情的になって、けんかを止めようとしたことが、若い頃の私にもありました。
とにかく自分のクラスでけんかがあってはまずいという思いから、大声を出してストップをかけてしまったのです。
これは、自分に対する保身の行動ですよね。

そのことによって、先生が怖いと言われてしまったのです。
それもけんかしていた子どもからではなく、まわりで見ていた子どもからです。
日頃からおとなしいY子ちゃんは、けんかしていることすら怖いのに、輪をかけて怒鳴った私の方がもっと怖いとビビッてしまったようです。
そのことをY子の母親から聞いて、けんかの場においては、まわりの子どもについても配慮が必要なことに気付かされ、大いに反省した私です。

× 善悪を大人の価値観で決めつけて、すぐに謝らせてけんかを終わらせようとする。
「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから、我慢しなさい!」
「先に手を出したあなたが悪い!謝りなさい!」と強制的に謝らせるのはNGです。
けんかの本質をうやむやにしては、子どもは納得しません。
「どうせ、自分の話は聞いてもらえない。」と、自分の思いを表現しようとしない子どもになってしまう恐れがあります。
大人との信頼関係もなくなりますね。

× 過去のけんかを持ち出す。
けんかの原因は、いつも同じとは限りません。
それなのに「前も同じことでけんかしたでしょ!」
「いつもあなたが原因を作っている!あなたが悪い!」と言われたら、
子どもの自己肯定感は大きく傷ついてしまいます。
過去のけんかは関係ありません。
目の前のけんかについてだけサポートしましょう。

子どものけんかで育つ生きる力

幼児期のけんかは、生きる力を養う上でとっても大切な行為です。
「けんかをすることで、人が嫌いにならないの?」と思うパパやママもおられるでしょう。
大人のけんかと子どものけんかは違うのです。
「生きる力」とは、人間として集団生活の中で自分らしさをのびのびと発揮する力なんです。

けんかをしたからこそ、気付くこともたくさんあります。
言葉だけで大人が「けんかはダメ」と注意しても、子どもの心には響きません。
たくさんけんかをしたからこそ、以下のような生きていく上での大切な力が育つと言えます。

自分以外の人がいることを認識する力

赤ちゃんは、自分を世話してくれる人(パパやママなど)以外の存在に気付いていません。
だから赤ちゃんはぐずついても、まわりの人とけんかすることはありません。
つまり、けんかができるようになったということは、自分と他の人の違いが認識できるようになったという証拠です。
さらに、他の人にもいろいろな思いがあって、自分とは違っているかもしれないと気付き始めたということですね。

自分の思いを表現する力

言葉で自分の思いをうまく表現できないから、手が出てしまうのです。
どうしようもない感情の高ぶりから、物を投げたり蹴ったりしてしまうのです。
言語能力が育ってくると、いろいろな言葉を使うことがおもしろくて、相手の反応を確かめたり、時には傷つけるような言葉を使ってみることがあるかもしれません。
善悪がはっきりしない幼児期前半には、自己中心的な表現してしまいます。

一見これらの行動はダメだと捉えてしまいがちです。
しかし自分の思いを自由に表現できなかったり、それを止められたりしたらどうなるでしょうか?
そんな経験が重なると、子どもは自分の思いを表現することに抵抗感を持ってしまう恐れがあります。
大きくなって、必要な時に発言できない子どもになってしまっては大変ですね。
自分の思いを相手に伝え、相手の意見も聞くことがコミュニケーション能力にもつながります。

N保育者
N保育者

〈ごめんね~ いいよ~で終わらせないこと〉
けんかで、すぐに「ごめんね」を言う子どもがいます。
「ごめんね」という言葉で、自分の行為が許されるかもしれないということを学んでいるからです。
本当に、心から悪いと思っているかどうか、大人は見抜くことが必要です。

ある時、Bちゃんに「ごめんね」と謝られたから、しかたなく「いいよ」と言わざるを得なくなったM子ちゃん。
本当はM子ちゃんの気持ちは収まっていなかったことに、保育者は気付いていました。
保育者「Mちゃん、本当にいいの?」
M子ちゃんの表情は、許したくないと訴えています。
保育者「M子ちゃん、許さん!って言ってごらん。」
すると、M子ちゃんは突然大声で
「許さん!いつもBちゃんは、私にいじわるするんだから」
M子ちゃんの訴えにビックリしたのは、Bちゃんです。
まさかM子ちゃんが反撃に出るなんて・・・ビビっていました。

時には、自分の思いを言葉で、体で表現することを教えてあげることも大切なサポートですね。

感情をコントロールする力

けんかをすることは、非常に大きなエネルギーを要します。
大声を出したり、時には物を投げたり蹴ったりして、周りを傷つける恐れがあります。
小さいうちの暴力は大人や友達の力で阻止することができますが、体が大きくなると難しくなります。

けんかは成長する上で必要な行為ですが、できれば話し合いで解決できるようになることが望ましいですね。
そのためには、感情をコントロールする力が必要です。
けんかしていて、悔しさや怒りをどのように表現していけばいいか。
言葉では教えてあげることはできません。
けんかを体験することで、自分の感情をコントロールすることを学んでいくのです。
けんかは、感情をコントロールする力を育てるための学びの実践の場だと言えますね。

問題解決能力

けんかしっぱなしでは、人間関係は壊れてしまいます。
人間関係(友達関係)を修復するためには、どこかで相手との妥協点を見つけないといけませんね。
「友達と仲直りするためには、どうしたらいい?」と大人が仲介役になってもいいでしょう。
「ごめんねと謝る」「おもちゃを一緒に使う」「ブランコを10数えたら交代する」など
子どもなりに、自分の思いが納得できるところを見つけるようにすべきですね。
けんかで衝突した状況から解決策を見つける。
それが、問題解決能力の育ちに繋がっていきます。

他者(友達)への共感性

本当はけんかしないで仲良く遊びたいと、どの子どもも思うところです。
友達と思いが違っていた時には、妥協点を見つけて遊びを継続することが望ましい。
そのためには、相手を尊重する気持ちが大切です。
「Aちゃんは、~ができるんだ。すごい!」
「Bちゃんはやさしくて、ぼくが困った時に助けてくれる。」など、相手の良さを認めることができるようになれば、けんかも相手を傷つけるまでにはなりません。
また、けんかで相手が悲しそうにしていたら、自分の行動が友達に与えた影響だと気付きますね。

相手の良さを認める(共感する)ためには、まずは思いのぶつかりあい(けんか)があってこそ見えてくるのかもしれませんね。

集団での協同性

幼児期も後半になってくると集団での遊びが活発になってきます。
一人一人の違い(よさ)が認識でき、それを尊重するようになると、みんなと一緒の活動がとっても楽しくなります。
役割分担や交代などのルールも生まれてきます。
こうなるまでには、いろいろなぶつかり合い(けんか)があったはずですね。
それを経験してきたからこそ、集団として活動することが楽しくなるのです。
けんかの中でのたくさんの経験が、集団で何かをするための協同を育てるのです。

子どものけんかを成長に変える親の対応

上記のように、子どものけんかは対応次第で、多くの生きていくための能力を育てていきます。
その中でも、やはり人間関係力は大きいですね。
それには、けんかの対応には子どもの心に対する大人の共感が重要になります。
以下は、より具体的な大人の共感フレーズをまとめてみました。
参考に使ってみてくださいね。

1 けんかの直後

     

・悔しかったんだね。
・あんなことされて、嫌だったんだ。
・やっぱり、そういう気持ちになるよね。
・びっくりしただけなんだ。
・ママ(パパ、先生)もそんな気持ちになったことあるよ。

2 落ち着かせたい時

     

・大きく息を吸ってごらん。そうそう、今度は息を吐いて~
・悔しかったら、いっばい泣いてもいいんだよ。
・疲れたね。ちょっと休憩しようか。
・お水を飲んでみる?
・ここに座って、どうしてけんかになったか一緒に考えようか。
・ママも一生懸命に考えてみるね。

3 子ども達の気持ちを認める時

     

・あなたは、こう思ったんだね。
・じゃあ、お友達(けんかの相手)は、こう感じたんだね。
・どっちの気持ちも大切だと思うよ。
・どっちも一生懸命に考えてしたことなんだね。
・あなたも〇〇ちゃんも、理由があってしたことなんだ。

4 けんかを振り返る時

     ↓

・どうしたら良かった?
・どうしたら楽しく遊べるかな。
・次は、どうしたら仲良くできると思う?
・また、同じことになったらどうしようか?

5 仲直りのきっかけをつくる時

     

・一緒におやつ食べようか。
・次は、どんな遊びをしようか?
・また楽しく遊べるように考えてみようよ。
・先生(ママ)も手伝ってあげるよ。

まとめ

けんかは、人と共に生きていく上での多くのスキルを身に付けるいい機会です。

「感情をコントロールする」→ 自分の悔しさや怒りを思いをどのように表現すればよいか。
「コミュニケーション能力を身につける」→ 自分の思いを相手に分かるように表現し、相手の話も聞く。
「問題解決能力を高める」→ いざこざやぶつかり合いの中から、どうしたらお互いが納得できる方法を見つけるかということを試行錯誤しながら見つけていく。
「他者への共感性を膨らませる」→ 相手が怒ったり悲しんでいる姿を見て、なぜなんだろう?と考えることは、他者の心の中をイメージし、相手の事を考えて行動できるようになります。

たくさんの人間としての大切な能力を育ててくれるけんかです。
確かに、けんかに立ち会うことは疲れます。
特に自分の思いを言葉でうまく表現できない幼児のけんかは、原因を突き止めることすら想像力を働かせなくてはなりません。

そしてけんかに対応していく大人
・しっかり子どもの気持ちを受け止めてやる。
・どちらの子どもの気持ちも大切にする。
・けんかに勝ち負けを決めるよりも、大人が自分を認めてくれたという安心感を与える。
・追求するのではなく、子どもから答えを引き出していくような問いかけをする。
・自然に仲直りできるようなきっかけや雰囲気を大切にする。

というように、心がけていきたいですね。

けんかは成長のための学びの機会と捉えて、対応してみましょう。
焦らずに、子どもの心に寄り添ってあげ、一緒に問題解決への道を探してあげましょう。
子どものけんかに寄り添うことで、大人も一人の人間として成長するかもしれませんね。
頑張ってください!


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