子どものけんかでは、「たたいたり、たたかれたり」という場面がよく見られます。
たたいた子どもは、悪い子ども?問題のある子ども?
たたかれてすぐ泣く子どもは、弱い子ども?
もし我が子が、どちらの立場になっても嫌ですね。
幼児の「たたく」行動は、発達段階からみて、よくある行動です。
そんな時、「たたいた子ども」にはどう対応する?ただ叱ればいいのでしょうか?
「たたかれた」子どもには、どのようにフォローすればいいのでしょうか?
また、保育者として親にはどのように説明すればいいでしょうか?
私は、38年間幼稚園教諭として勤務し、子どものけんかに付き合ってきました。
現在は児童クラブの支援員としても、小学生のけんかの仲裁をよくしています。
この記事では、子どものけんかで「たたく」「たたかれた」があった場合
保育者は、子どもにどのような対応をすればいいか、
また、親にはどのように説明すればいいかをお伝えします。
子どもの「たたく」「たたかれた」は、なぜ起きる?
けんかしている時の子どもの発達と行動を見てみましょう。
・言葉が未発達です。気持ちが、うまく表現できませんね。→ 口より手で表現するが早い!
・自分の思い通りにしたい!→ 自己中心的な子どもは、まわりが見えません。
・相手との距離感かつかめません。→ 思いがけない接触に、あ~勘違い。
・衝動的な行動が多いです。 → 興奮すると行動を押さえることができません。
〈たたく → 「悪意」ではない! → 発達途中のサイン!〉
・くやしい・・・おもちゃ取られた!順番を抜かされた。
・悲しい・・・・思いが伝わらない。
・不安・・・・・相手が近くに来すぎて怖い。
・興奮、衝動・・気持ちが高ぶって、ドキドキが抑えられない。
・もどかしい・・自分の思いが、言葉で相手に伝わらない。
★子ども、特に幼児は、まだ言葉より行動が先に出る発達段階にあります。
★たたくのは悪意ではなく、SOSのサインだと理解して対応しましょう。
「たたく」「たたかれた」の保育者の対応
たたいた子どもを見て、「あーあ、またあの子がトラブル!」なんて思っていませんか?
いつもいつもならば、そう思いたくなるのも当然です。
でも、たたく子どもの本当の気持ち・・・隠れていますよ。

「たたく子ども」への対応
1 安全確保・・・これ以上に「たたく」ことがないよう、その行動を止めてください。
・ストップ
・体をそっと押さえて、相手の子どもとの距離を取らせます。
・背中を撫でたりして、落ち着かせましょう。
2 たたいた子どもの気持ちを言語化します。
・たたいた理由、その時の気持ちを言葉にさせます。
・うまく言葉にできなければ、保育者が代弁してもいいです。
「おもちゃ、使いたかったんだ」
「でも、たたかれたAちゃんは痛かったよ。きっと・・」
「順番を待つのが嫌だったんだね」
「何か言いたいことがあったんだ~」
↓
★たたいた子どもを責めてはダメ!
たたいた理由を状況から察して、保育者が代わりに言ってあげると、
子どもは「先生は分かってくれているんだ」と感じて、落ち着いてきます。
3 たたかれた子どもをケアする様子を見せます。
・たたかれた子どもに対して
「痛かったね」
「大丈夫?」
「びっくりしたね」など声をかけます。
・たたかれた子どもの気持ちを察しながら、やさしく労わる様子を見せます。
「ここが、ちょっと赤くなったね。さすってあげる。」
↓
★たたいた子どもを責める言い方はしないでください。
これからの子ども同士の関係性を広げることが大切です。
たたいた子どもは、大人がたたかれた子どもをケアしている様子を見ることで、
どうすればいいか理解し共感性が育ちます。
4 落ち着いたら振り返る。
・たたいた子どもに対して
「さっきはたたいちゃったよね。どうしたら良かったと思う?」
「言葉で言えたら良かったよね。」
↓
★もし、言葉でどうすればいいかを言うことができたならば
「言葉で言えたね。すごいよ!」と、認めてやりましょう。
ダラダラと声掛けせずに、
短く・具体的に・肯定的な言葉がけをすると子どもに分かりやすいです。
5 たたくことの代わりの行動を教えます。
・たたいた子ども、たたかれた子ども両方に対して、
どうすれば良かったかを一緒に考えましょう。
「貸してねって言うといいね。」
「順番代わってもらっていい?と言ってみて。」
「もし嫌な時にはダメとか、やめてって!言っていいんだよ。」
↓
★たたくことを肯定するのではありません。
自分の気持ちに合わない時にはどうすればいいか、次はどうしようかという行動のあり方(問題解決のスキル)を教えてあげるのです。
「たたかれた子ども」への対応
1 即時対応・・・気持ちのケアと身体の安全確保が必要です。
・痛みの確認
・身体の手当(ひやす、様子を見るなど)
・気持ちの受け入れ・・・「びっくりしたね」「痛かったね」など声掛けをして落ち着かせる。
★相手を責める言い方をしないでください。
たたいた子どもを悪者にするような言い方は、不安がもっと強いものになる恐れがあります。
2 心の回復・・・たたかれた子どもは、ビックリした、怖かった、悲しかったなど、複雑な感情をもっています。その気持ちを言語化して、安心を取り戻させます。
・保育者が代弁・・・「嫌だったね」「急にたたかれて、びっくりしたね」「どうしてたたかれたの?」
★気持ちを言葉にすることで、子どもは落ち着きます。
感情を整理することを大人が手伝ってあげましょう。→ 対人関係への安心感

たたく子どもの心を育む援助
けんかで友達をたたく子どもは、それなりに原因があります。
援助したから、すぐによくなるとは限りません。
気長に、機会をとらえての援助が必要ですね。
1 日常的に、気持ちを言語化するようにしむける。
「かなしいの」
「くやしい」
「貸してって・・」
けんかのきっかけになりそうな場面での言葉を教えてやるといいですね。
言葉が育っていくと、たたく行動は減っていきます。
2 スキンシップで安心感を持たせます。
たたくのは、心が満たされていないからかもしれませんね。
けんかでたたく行動が出そうと感じたら、そっと抱きしめたり手をつないだりしてみては?
安心感が満たされると、きっとたたくことを思いとどまるかも・・
3 感動体験を積ませる。
ちょっとした行動を認める言葉がけをしてみましょう。
「言葉で言えたよ」「すごいよ」「順番守れたね」「できたね」「やさしいね」
このような自己肯定感を高めるような言葉がけをすれば、たたくことをグッと堪えるようになりますよ。
4 環境を整えてみましょう。
遊びの場の広さ・人数・おもちゃの数・子ども同士の距離感など整えてみてください。
時には、子どもたちに貸し借りや順番のルールに気付かせるために、おもちゃなどわざと少なくすることもありますが、
穏やかに関わりながら遊べるような遊びの場の環境が整えば、トラブルの減少につながります。

【子どものけんか】親への伝え方
次の3つがポイントです。
・事実だけを伝えましょう。
・誰が悪い、どちらが悪いという言い方を避けましょう。
・今後どのような対応をするか、保育者と親で共有します。
たたいた子どもの親に対して
1 子どもへの先入観をもたず、また過去のトラブルを出すことなく事実をきちんと伝えます。
とかく、「前もあったんですよね」「もう何度目でしょう」「また、たたいたんです!」と
その日の出来事以外のことを話しがち(言わなくても、保育者の表情に出る)ですが、過去は過去
今日のことだけを伝えます。
2 園の対応方針を話します。
けんかを成長の機会だと捉えているが、相手を傷つけた時には、その子が分かるように話します。
また、一人を責めることなく、みんなの問題としてクラスで話し合っています。
というように、保育者はきちんと対応していることを伝えると、親は安心します。
3 家庭(保護者)のフォローをする。
たたくことは、いろいろな思いがあってしたことだろうから、その原因をさぐってみたい。
しかし、いつも子育てをがんばっているお母さん・お父さんだから、このたたく行動をやめるようにするために、一緒に考えてみましょう!と励ます。
↓
家庭でも嫌なことがあったら「たたく」のではなく、自分の思いを言葉で表現する必要性を伝える。
〈たたく子どもの親への助言〉
子どもを責めすぎない。
自己肯定感を守ることが大切である。
自分の思いを表現する方法を教える。
たたかれた子どもの親に対して
1 感情的にならないように、安心を与えるような話し方で伝える。
保育者の話し方によって(先入観をもっていたら、表情に出るから気をつけましょう)
親は安心もするし、不安にもなります。
まずは、親に何か言われるのではないだろうかと思わずに、事実を冷静に伝えましょう。
2 園・保育者がとった方法を伝えます。
子どもに対しては・・・「痛かったね」「先生が守ってあげるから大丈夫」などの言葉がけをして、安心な気持ちになるように配慮していること
このようなけんかでのたたくという問題に対しては・・・たたいた子どもにはもちろん、たたかれた子ども、クラス全員に問題点を共有して、みんなで考えるような保育をしているということなど
園での保育方針を説明して、わかってもらうようにします。
3 たたいた子どもを悪者にしない。
子どもは、けんかから得るものも多く成長のチャンスだということを伝え、今後、仲良くする可能性も多いことを分かってもらう。
・けんかは、人間関係を育てるものであるから、今後もしっかり子どもから目を離さず援助していきたいことを伝える。
親同士の関係性をどうする?
〈鉄則〉
1親同士で直接やりとりをさせない。
2 一度目ならば、親にけんかを伝えない。
(二度・三度と度重なるようならば、伝える。)
親同士が「うちの子がたたかれたんですって?」
「すみません。うちの子がたたいてしまって・・・」というような直接的なやりとりは、
事実と違う話になったりする恐れがあります。
誤解・感情的な対応関係悪化につながらないように配慮が必要ですね。
子どものけんかは、親には関係なく、園の責任であるから逐一親に伝える必要はありません。
〈子どものけんか〉
・対応は、すべて園で行う。
・親同士は、普段通りでOK。
・必要以上に、たたかれた親に謝まったり、たたいた子の親を責めたりしない。
親同士の関係性が壊れないようにする。

〈保育経験から〉
子どものけんかの責任は、確かに園にあります。
しかし・・・親の感情を考えた時には、時には親に謝ってもらうように、
園が仲を取りもつこともありますよ。
たたかれるということが度重なると
たたかれた子どもの親は、
「うちの子は、もう何度もたたかれた。あの親は、このことを知っているのかしら?」という気持ちになることがあります。
それまでに、園では子どもに対しての指導は行っているのですが、
親の感情としたら、一言くらいは挨拶があってもいいのではという気持ちもあります。
そんな時には、保育者が間に入って、
たたいた子どものお母さんは、たたかれた子どものお母さんに対して
「いつもごめんなさいね。たたいたらダメたよと注意はしているのですが・・」
と、挨拶があれば
「いえいえ、おたがいさま。子どものけんかですから・・」と
親同士の関係がスムーズになることもありました。
保護者の性格を理解した上で、園が仲介役になるといいですね。
まとめ
子どものけんかで、「たたく」「たたかれる」という場面をよく見ます。
たたかれた子どもは泣くことが多いため、どうしてもたたいた子どもが悪い子だと思われてしまいがちですね。
しかし、「たたく」行動は
・気持ちが未熟
・衝動が抑えられない
・言葉が追いつかない
などの理由、ただそれだけなんです。
保育者にとっては、「たたく子ども」も「たたかれた子ども」も大切な存在です。
けんかがおきた時に、行動面を見てどちらが悪いかを判断するのではなく、
子どもたちの気持ちを理解して、援助をすることが大切ですね。
特に問題視されがちの「たたく子ども」に対しては、
・行動の裏にある気持ちを読み取る。
・気持ちを代弁して、思いを表現できたことに安心させる。
・たたくということの代わりの行動を教える。
・たたかれた子どものケアを見せる。
・長期的には、気持ちを言語化させる・成功体験を増やすことで安心感を持たせる。
などが必要でしょう。
「たたく」・・・成長過程におけるトラブルの自然なサインです。
大人の関わり次第で、子どもは確実に変わっていきます。
将来にわたって、よりよい人間関係を築く能力を育てるためにも子どもたちに寄り添っていきましょう。
また、「たたく」「たたかれた」の子どものけんかにおいては、親のケアも必要になり保育者としては悩むところですね。
園の対応の在り方を共有して、子どもの成長第一に取り組んでいきましょう!
〈子どものけんかに対して、親の対応の仕方について〉は
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