「なぜなぜ期」は、2~6歳頃の子どもが「なんで?」「どうして?」と聞いてくることが増えます。尋ねてくるしぐさは、とってもかわいい。
しかし、大人が忙しくてゆっくり対応できないと、時には「もういい加減にして!」と言いたくなる。
こんな「なぜなぜ?」の子どもの質問に対して、大人はどのように答えてあげたらいいでしょうか?
38年間幼稚園教諭をしていた私が、幼児の発達を考えた上での対応の仕方をお伝えします。
幼児の「なぜなぜ?」は、脳が発達する時期
子どもの「なぜなぜ期」は、発達段階の一つの行動であり、心理学では「質問期」とも呼んでいます。
「なぜなぜ?」と質問を繰り返す姿は、それまではまわりの事に対してあまり関心をもっていなかった子どもの知的好奇心が、ぐーんと伸びてきた証拠なんです。
子どもたちの「なんで?」「どうしてそうなるん?」というような発言が頻繁に聞かれるようになると、幼稚園教諭としての私は、子どもが成長しているのだという実感をはっきり感じることができてうれしくなっていました。
1~2歳頃は、同じ質問の姿であっても「これなあに?」というように物の名前を知りたがり、いわゆる「命名期」や「なになに期」と呼ばれ、自分の言葉をどんどん増やそうとしている時期です。
「なぜなぜ期」はその次の段階に入った証拠です。つまり、言葉という表面的な情報だけではなく、物事が存在する意味や原因など、より深く本質的な部分を知ろうする時期なのです。
「なぜなぜ期」は、子どもの成長にとって重要な時期であり、次のような特徴があります。
- 脳がぐんぐん発達して、さまざまな事に興味・関心を持ち始める。
- 周囲の世界に対する好奇心が強く、さまざまな知識を吸収しようとしている。
- 言葉の発達もこの時期に大きく成長する。
- 質問を繰り返すことで、周りの人とのコミュニケーションが豊かになる。
2~6歳頃の「なぜなぜ期」で脳の90パーセントは完成!
何歳頃に、「なぜなぜ期」の姿が活発になるか?また、どの程度か?は個人差が大きいです。
しかし、この時の大人の対応の仕方によって、なぜなぜ期の程度には大きく差が見られ、それ以降の成長にどのように繋がっていくかということが考えられるようです。
成人の脳の神経完成度が100パーセントだとすると、3~4歳頃までには80パーセント、5~6歳頃までには90パーセントにまで発達しているのです。
そのためこの時期に子どもの質問がより活発になることは、脳の神経発達に大きく影響することなのです。
だから、子どもの「なぜなぜ?」と言う質問を大切にしてやり、子どもの好奇心を育んだり、知ることの喜びに共感してやることは、つまり幼児期以降の学習意欲に繋がっていくのです。
忙しい時に、「なんで?」「どうして?」としつこく質問されると
つい「そうなることに決まっているの!」と、子どもの質問を切ってしまうことが
あったけど、、、
子どもの発達に大事な質問だと考えたら、なぜなぜ期をもっと大切にしてやらないと
いけないんですね。
「なぜなぜ期」の質問には、こうやって対応しよう!
なぜなぜ期の質問には、保育の経験があり、大人の私であってもパーフェクトに答えることは難しいのです。
なぜなら、なぜなぜ期の子どもは、大人の私にも分からないような質問をしてくることもあるし、思いもよらない時に突然に「ねえ、どうして?」と言ってくることも多いからです。
実際、科学的に解明されていないような質問もあるし、外出先などで「どうしてあのおばさんは太っているの?」と質問されあたふたしたこともありました。
では、そのように難解なものが入り混じるなぜなぜ期の質問に対して、大人はどのように対応すればいいでしょうか?
本当にさまざまな種類のものがあります。一つひとつの質問に対して「こうすればいい」という明確な方法はありません。
だからこそ、質問の内容や質問された場面によって柔軟に対応していくことが大切だと思います。
子どもは、質問に対する正確な答えを期待しているわけではないことも多いのです。
自分の質問に対して、どのくらい大人が誠実に関わってくれているかどうか、子どもなりに見ているのかもしれません。
大人が忙しい時に限ってしつこく質問を繰り返す。
つまりは、正確な答えを求めているだけではなく
大人が自分に対して、いかに真剣に向き合ってくれているか
それを知りたいこともあるのかもしれないね。
大人が、子どもに試されているということかな?
あるあるこんな「なぜなぜ?」に悩んだら・・・
子ども「これはなあに?」
大人「りんごだよ」
子ども「なんで、リンゴは中は赤じゃないの?」
大人「なんでだろう?」
子ども「中が赤だったら、食べたらお口が赤くなる?」
大人「ならないよ」
子ども「人参は、食べたら赤くなる?」
大人「どうだろう?」
子ども「じゃあ、大根は?」
大人「そうだね。食べてみようか」
次から次へと続く質問
適当に答えているけど、、、
めんどくさくなって、話題をストップさせたけど
きっと「なぜなぜ?」はまた来るだろうね。
大人「今日は、お家で遊ぼう」
子ども「なんで?」
大人「寒いからね」
子ども「なんで寒いと、お部屋で遊ぶの?」
大人「お外は風が吹いている。さあ、お絵かき帳持っておいで」
これ以上、質問が出てこないように
早く遊びに目を向かせて
「なぜなぜ?」から逃れたい気持ち・・・
子ども「おばあちゃんは、お父さんのお母さんだよね」
「どうして、お母さんなのにおばあちゃんって呼ぶの?」
大人「おばあちゃんだから・・」
子ども「ぼくには、お母さんは一人だよ。どうしておばあちゃんは二人いるの?」
子どもに家系図を書いて、説明してやらないといけないのかな~
飼っていた小鳥が死んでしまったから、子どもと一緒に庭に埋めました。
子ども「小鳥さんは、どこに行ったの?」
大人「小鳥さんは、お空のお星さまになったのよ」
子ども「そうなのか~ お星さまになって僕を見ているのかなぁ」
翌日、小鳥のお墓が掘り起こされていました。
子ども「まだ、小鳥さんはお星さまになっていなかったよ。いつお星さまになるの?」
お墓を掘り起こした子どもの行為を見て、びっくりしたけれど・・・
きっと大好きだった小鳥が、本当にお星さまになったかどうか確かめてみたかったんですね。
真実を自分の目で確かめようとした子どもは、物事を追求しようという意欲が育ってきているのかな?
子どもの「なぜなぜ?」はかわいいものだと思うけれど、大人の心にゆとりがなければ、なんとか短時間で解決させたいという気持ちになりますね。しかし、前述したように「なぜなぜ期」は子どもの発達の一つの姿であり、これを大切にすることで、次への大きな成長に繋がってくるのです。
「なぜなぜ?」に対する上手な答え方
1 簡単なものならば、大人が思った事をすぐに答えてやる
子どもは質問したら、すぐに大人が答えてくれることを期待しています。たとえ、その答えが正解でなくても、自分の言葉を大人が受け止めてくれたという行為がうれしいのです。
だから時間がなかったり、なんと答えていいか分からずに「ちょっと待ってね」と先延ばしにして、少し後になってから「さっきの話なんだけど・・・あれはね・・・きっとね・・・」と応えようとしても
その時には関心はなくなり、子どもはまったく聞く耳を持っていないということがよくあります。
一度や二度ならばいかもしれませんが、そんなことが続くと、子どもは「どうせ聞いても答えてくれない。僕の話なんて、どうでもいいんだ。」と大人に尋ねることをしなくなり子どもの好奇心の芽を摘んでしまう事にもなりかねません。
さらに、子どもは「大人は子どものことを相手にしてくれないんだ」と信頼関係にひびがはいってしまうかもしれません。
大人にとっても、「せっかく答えてやろうとしたのになんなのよ!」と文句を言いたくなる。
「あのね」「なあに」という楽しい会話に繋がらず、人間関係すらうまくいかなくなる恐れがありますね。
たとえ大した質問でなくても、また、子どもが求めているような答えでなくても「お母さんはこう思うよ」と応えてあげましょう。
2 大人も楽しく、一緒に調べてみる
簡単な質問であれば、その場で答えてあげることがベストです。しかし、大人でもよく分からないことを聞かれたら即答できないこともありますね。
子どもは、「この質問は誰に聞けば、よりよい答えが求められるだろう」とか「あの人ならば正しい答えを知っているだろう」と予測して質問はしていません。なぜなぜ?と感じた時に、そばにいた大人をつかまえて質問するのです。
ですから、大人でもすぐに答えることができないような質問が来るのです。
そんな時には、「ちょっと待って」とスマホ検索してもいいのです。
もちろん図鑑や辞書を出して、子どもと一緒に調べてみるといいですね。
「お母さんもよく分からないから、一緒に調べてみようね」ということをきっかけに、分からないことをそのままにするのではなく、調べることで解決の糸口が見つかるかもしれないことが子どもにも伝わり、今後、子どもも自分で調べるという主体的な態度が身に付くかもしれません。
そうなれば、「なぜなぜ期」の卒業です。
答えを調べることは、なるべく早く、子どもの興味が失われないうちがいいでしょう、また、外出先などですぐに調べることができなかったら「さっきの~だけど・・・」と子どもの質問を大切にしているのだということを伝えてあげましょう。
3 逆に質問して、子どもの考えを聞いてみよう
子どものなぜなぜ?に対して、一番手っ取り早いのは、「あなたはどう思う?」と逆に質問してみることです。保育現場では、このケースがかなり多いです。
子どもがどのくらいの思いで質問しているのかを察することができます。その答えに合わせて「そうなんだね、よくわかるね。」と子どもの気持ちを認めてやり、その上で「パパはこう思うんだけどな」と会話を弾ませていくといいですね。
子どもは自分が一生懸命考えて、問題解決の糸口をみつけたことに満足感を味わうでしょう。
さらに想像力を膨らませながら、自ら考える力を高めていくことになりますね。
NGな対応は、子どもの学ぼうとする意欲をダメにします
1 質問をうるさがったり、無視したりしないで!
子どもが質問するのは、「なぜだろう?」とか「どうして?」という気持ちがあるからです。
しかし、幼児は知りたい気持ちを満たすことだけでなく、それ以上に大人とのコミュニケーションを求めている場合もあるのです。
一度質問をして、その時の答えや説明がおもしろかったから、また同じ質問をしてみるということもあります。
だから質問した時に、大人が聞こえないふりをしたり、「そんなこと分からないよ!」と強い態度で言葉を返したら、子どもの気持ちはどうでしょう。
きっと、コミュニケーションをとることを否定されたという気持ちになるのではないでしょうか?
もちろん大人もその時の状況で、つっけんどんな態度で応えてしまうこともありますが・・・。
「もう二度と質問しない!」とか、分からないことがあっても聞くと嫌な気持ちになるから「もう、この人には聞かない!」とコミュニケーション以外にも、いろいろなことを学ぼうとする意欲さえなくなってしまう恐れもあります。
質問されたなら「正解をきちんと答えてやらないといけないのだ」と思わずに、子どもとの関係を壊さないように、楽しいコミュニケーションの一つとして考えてはいかがでしょうか?
「あなたの話はきちんと聞いているよ」という態度を示すとこれからのよき関係も続いていくでしょう。
2 適当にごまかさないで!
大人にもその時々で都合はいろいろあるでしょうが、「はいはい、分かったから、また後で!」「よくわからないけど、~なんじゃない?」など適当にあしらうことは避けた方がいいです。
子どもが質問するということは、その大人を信頼している表れでもあり、質問するというコミュニケーションによって愛情を深めていくことにもなるのです。
大人と同様、子どもだって相手に適当な態度をとられることで「自分は、この人に大切にされていないのかもしれない」と受け止めてしまうことになれば悲しいですね。
どうしても手が離せないとか、質問が難しくてすぐには答えられないということもあるでしょう。
そんな時には、「ごめんね、今は忙しくて答えられないの。だから、もうちょっとしてからね」とやさしく対応してあげましょう。
ここで大切なことは、「また後でね」という約束は必ず守って下さいね。
3 子どもの質問を先回りして、答えてしまわないで!
年齢が低く、自分の思いを言葉でうまく表現できない子どもの場合、大人にはその質問が何を言っているのかよく理解できないことがあります。「えっ?なんて?」「もう一度言って?」と子どもに質問しても、それでも理解できない。
ゆっくり子どもの話を聞いてやれない時などは、イライラしてきますよね。
つい、子どもの質問の途中に「ああ、それは~で、~って言う事?」「それはね。~っていうことじゃないの」と質問の先回りして答えたくなります。
上手に話せない子どもの質問を大人が推測して、きちんと答えてやっているようですが、案外子どもが聞きたいと思ったこととは違うことがあるのです。
そんな時には、子どもは何も続きが話せなくなってしまいます。
子どもがうまく質問できずに言葉が詰まってしまった時には「それは、こういうことを聞きたいのかな?」と誘導してあげることは構わないのですが、子ども本人が自分の言葉で一生懸命に話そうとしている時には、しっかり耳を傾けて待ってあげましょう。
相手に分かってもらうために子どもなりに言葉を選び、話の構成を組み立てていくという作業は、子どもの言語能力を高め、表現力を育てていくことになるのです。
そのためには、ゆっくり話す時間をもってあげることが必要ですね。
4 質問を否定したりバカにしたりしないで!
大人からすれば、子どもの質問は実にナンセンスだと感じることもあるでしょう。そんな質問に対して
「そんなことは、子どもは知らなくてもいい」とか「そんなことも分からないの?」と返してしまえば子どもでも悲しい気持ちになります。
「もうこれからは、この人には自分の気持ちを話したくない」となってしまう恐れもあります。
答えられる質問には答える、答えられない質問には一緒に調べたり考えたり、後から答えることを伝えたりと、子どもに対しても真摯な態度で向き合ってやりたいですね。
大人も子どもの質問に対して真剣に考えることで、今まで当然だと思っていたことに新たな発見があったり、子どもの感性に驚かされたりときっと楽しい「なぜなぜ期」を過ごすことになるでしょう。
子どもが自由に質問したり調べたりできる環境をつくりましょう
子どもの「なぜなぜ?」はどんな質問が出てくるかは、予測不明です。しかし、突拍子のない質問が出てくるなんてワクワクしませんか?
分からないことを調べる時に最近は「ググる」と、若者言葉にもなってきました。子どもの時から分からないことを聞いたり調べたりできる環境があれば、子どもは自ら学ぼうとする気持ちが育つでしょう。
子どもの生活環境として、興味関心をもっていそうな絵本や図鑑を揃えておくといいですね。
また、音楽などの雰囲気づくりも心を落ち着かせ、「なぜなぜ?」にじっくり向き合うこともできます。
そのためには、今こんなことに興味を持ち始めているとか、こんなことに関心をもってほしいなという思いで子どもを理解しておくことが大切だと思います。
親子共通の興味・関心の世界が広がっていくと素敵です。
まとめ
2歳~6歳頃に起こりやすい「なぜなぜ期」です。大人にとっては、子どもの質問の内容やその時の状況によって少し面倒だと感じることもあるでしょう。
しかし「なぜなぜ期」は、子どものその後の成長につながる大切な時期なのです。
子どもの「なんで?」「どうして?」という質問を成長の証だと受け止め、親子で楽しむ時間にしてはいかがですか?
「なぜなぜ?」を面倒だと捉えることより、世の中の物事に関心を向けるようになった子どもの成長を喜んであげてください。
「なぜなぜ期」は脳が著しく発達し、子どもの想像力や創造力を養う大切な学びの時期です。
子どもの大きな成長につなげていきましょう!
コメント